(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)

2008年11月08日

(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)

 今日の午後、熊本で公害問題に真正面から立ち向かう二人に賢人の講話がありました。

 一人が原田正純教授で、医師という立場で水俣病問題に長く関わり、病と言う視点でだけでなく、多方面から水俣病の公害を考える「水俣学」を提唱し、医療だけでなく、環境、農水、産業、自治、衛生、更には政治、政策、そして世界的の公害被害者の面から、「人権」を考え続け、提言を出し続けておられる人です。

 もう一人が小松裕教授、田中正造の研修者であり、足尾鉱毒問題(公害)を社会問題、政治問題、そして人権問題と多方面から考え、田中正造の行動を検証することで、明治の時代リーダーたちの言動を検証している方です。小松氏とは、7年間に友人を通じて熊本の「田中正造研究会」に時々参加するようになり、今回もぜひ聞きたいと思い出かけました。
(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)
   今日の演題

(講話から)
 足尾鉱毒問題が辛酸を極めた時に、被害を受けた地域の状況を数値が表わしています。明治初期の出生と死亡の全国平均です。
 日本の人口100人当り、平均の出生が3.21人、死亡が2.60人。これに対して被害がひどかった谷中村は、出生が2.80人、死亡が4.15人と記録があります。
 それを現すような当時流行った歌がその実情を良く現しています。
(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)
   遊水地にさせられた谷中村

「鉱毒歌」
「・・人の体も毒に染み、妊めるもは流産し、はぐくむ乳に不足なし、二つ三つまで育てるも、毒のさわりに皆たおれ、又悪疫に流行し・・・」

と歌われたそうです。この公害に近い状況を、宮崎の土呂久鉱毒事件の状況が帰されていました。原田教授の資料から転載します。

(資料より)
・・ここでも、最初に蜜蜂、蚕が死に、ついで花をつける野菜(ナス、キュウリ、トマトなど)、そして稲に被害がみられた。さらに小鳥から家畜の牛馬が死し、そして人に被害をうけたという事件であった。(中略)

 明治の学者もただ国の殖産興業を後押しする人ばかりでは無かったことの紹介されました。綿密に「銅汚染」を調査し、銅中毒を検証をしました。ただ、銅だけの中毒を検証してもなかなか結果が出ず、歴史上に無かったことの検証はなかなか難しいかったと思います。結果は、結論が出なかったようです。

・明治の政財官癒着(足尾銅山の背景)
 その中の研究者の一人が、銅単独の中毒(汚染)でなく、「広義の慢性銅中毒」にしぼって考察し、「銅だけでなく、鉛、亜鉛、砒素、金、銀、アンチモン、コバルト、ニッケルなど」の複合的な観点から、鉱毒被害を調査し、「複合汚染」の問題を指摘した、林春雄氏が居ます。ところが、この論文を発表した直後、ドイツ留学を命じられ、その後を継いだ橋本節斎は、600人を越える住民健康調査をして、「主たる病気は、寄生虫であり、その原因をしばしば繰り返される洪水である」と結果を発表した。
 これは、完全な研究発表の隠蔽と思います。当時に担当大臣は陸宗光で、その陸奥の次男は古河の重役で、次期社長になった人物でした。政治・官僚・企業の癒着の状況が見えます。
(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)
  足尾の山の風景

・水俣問題解決を急ぐ政治家と企業
 これに似た状況が水俣病発覚時に何度かあったと、原田氏、小松氏が話されていました。 足尾鉱毒事件でも、民衆の不満を除くために、最新鋭(?)の公害(汚染物)除去機器を導入して、「この後は問題がなくなるから、和解に同意しろ」と、政治家、官僚を伴い交渉をしたといいます。
 水俣も同じで、新しい浄水機器を導入したして、排水口の水を知事が飲んで見せたそうですが、実はその水は大量に流された「水道水」だったと解かっていました。水俣病問題でも政治・官僚・企業の癒着に変わりないと思います。足尾鉱毒公害から80年を時を越えても、反省も学習も無く、ただ住民を騙し、押さえつける「強権的行動」があるように思います。

・今行われいる地域の有力者の仲介
 今日の講話の中で、政治・官僚・企業のやり方が、今だに変らない感じます。以前から「地域の有力者が仲介役になる」、これは意見を言いにくくするやり方で、その解決パフォーマンスを政治的な成果に利用しようとする政治家が今も居るように思います。

・未知に情報は現地の体験から学ぶ
 公害は、常に弱者に降りかかります。原田氏の言葉に、(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)歴史上無かった病「公害病」は、公害を受けている人びとの中に入り、様々な意見を聞きながら一医師として、そして一市民として勉強をし続けています」と語られていました。
 真の情報は、被害を受けている住民の中から得る情報から真実を導き出すことが大事ですと強く話されました。
(足尾・水俣に学ぶ)自然界に異変が出た時は手遅れ(原田正純)
   (カメラマン)ユージン・スミスと、胎児性水俣病の子ども

 田中正造は、命がけで明治天皇に足尾鉱毒問題を直訴しました。結果は、歴史が証明しています。未だに、足尾の山には、緑が自然に回復することが出来ません。

 田中正造の遺訓を紹介します。田中正造は、「山や川の寿命は万億年の寿命」、人間の寿命は「一瞬間」に過ぎないという地球史からすれば、人為的に自然を変革するのは罪悪であり、自然を害して得られる利益は「人造の利益」であり、真の文明ではないと言っていたそうです。

「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」 

 田中正造は、平和主義者で、軍備反対、外交を重要視し、自治は住民に近い所に権限を置く「地域主権」を唱えていました。明治期に「住民(国民)主権」「平和主義」「共生」の考えに行き着いた日本人が居たことが奇跡と思います。今の日本を田中正造が見たら何というでしょうか。

 少々長くなりました、最後までご笑覧頂き感謝します。

<関連コミュ>
・田中正造
 http://mixi.jp/view_community.pl?id=260975

<関連日記>
・田中正造氏と、川本輝夫代表
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=299400150&owner_id=2182841
・良心の人=田中正造(映画上映を終えて)
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Posted by ノグチ(noguchi) at 23:12│Comments(0)政治問題(国)
 
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