白州次郎的生き方:カントリージェントルマン

2008年03月03日

白州次郎的生き方:カントリージェントルマン

 「その時時代は動いた」の放送以来、日本の人たちに改めて知られるようになっ
た、戦後のGHQの統治下で、「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめ、献身的に
戦後日本の方向を見つける中で活躍し、堪能な英語、英国での経験を踏まえ、日本
の意志を要求し続けた姿勢(生き方)に興味を持っています。

 その中で気になっていた「カントリージェントルマン」の意味を探す番組でした。
戦時下の昭和18年から田舎暮らしをし、戦争当初から「日本は敗戦し、東京は焼け
野原になる」と語っていたそうで、農業をしながらの隠居暮らしをした意味を、私
自身も「白州氏の思いはなにか」が気なっていました。

 9年間のイギリス留学で身につけた、ジェントルマンの精神と言動は、その後の白
州氏の生き方そのものだったことが最近分かってきました。田舎に居ながら、中央
の動きに目を光らせ、事が起ると「いざ鎌倉」の志を持ち、私欲を捨て出て行き、
献身的に働き、目途がたてば、サーッとまた田舎暮らしにもどる生き方とでも言い
ましょうか。正に、ジェントルマン(紳士=志士)と言えるものです。

 私は、幕末に維新回天の思想的裏づけをした一人と言われる、熊本の横井小楠先哲
について15年ほど、興味のままに勉強して来ました。その横井小楠先哲が敬慕した、
儒学者の熊沢蕃山の生き方が、白州次郎氏の行動が重なって来ます。政治機構の大き
さは、藩と日本国では違いますが、役が与えられれば獅子奮迅の働きと功績を残し、
役を退けば「風流人」的に、文学、歴史、芸術を田舎暮らしをしつつ楽しむと言う生
き方です。

 維新の偉人、勝海舟も維新後、明治政府には入らず、悠々自適生きながらも、旧幕
臣の人材たちの行く末を心配したり、それでいながら中央政府には、目を光らせてい
たと言われています。勝海舟も日本的風流人(カントリージェントルマン)的生き方
に徹した人物だったのかもしれません。

 カントリージェントルマン(田舎紳士)になるには、深い教養と世界的な視野を持
ち、そして「原理原則とは何か」を常に問い続ける生き方のように、番組を見ながら
思いました。そんな生き方も、「かっこいい」かなと、感じています。
カントリージェントルマンには、まだ程遠い自分ですが、「原理原則とは何か?」い
つも私なりに考えて生きたいと思っています。

 さて、白州次郎氏を紹介した本の中に、ケンブリッジ時代のある教授の考えを批評
した部分がありました。世界的物理学者のJ・J・トムソン教授の試験を受けた時のこ
とでした。充分に勉強して臨んだ試験の評価は低く、答案に「君の答案には、君自身
の考えが一つもない」と書かれていたので、次の試験では存分に自分の意見を書いた
ら、評価が高かったとありました。
 J・J・トムソン教授の試験は、日本の試験のマニュアルにない解答は「不可」とは
だいぶ違い、「自分で考える」ことを要求するイギリス式教育の考え方を学んだのだ
と思います。かつての日本にも、そんな教育が在ったように思います。

 自分で考えることの大事さを、戦後首相の経済指南役と言われた、経済学者の木内
信胤氏も何回も述べています。「自分で考える、分かるまで考える」ことが、不透明
の時代に必要な要素なのかもしれません。
 話がだいぶ外れましたが、白州次郎氏の「武相荘」をいつか訪れたいと、番組を見
ながら思いました。

*参考資料:青柳恵介著「風の男 白州次郎」
      安岡正篤著「酔古堂剣掃(すいこどうけんすい)」


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Posted by ノグチ(noguchi) at 09:26│Comments(0)偉人
 
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