時には自己PRも必要である(五輪の書)

2008年08月16日

時には自己PRも必要である(五輪の書)

「野に遺賢なし」と、言う言葉が昔からありますが、どんな草深い田舎にいても、必ず見出されるという故事です。しかし、みなさまの周りですばらしい人と思うのに、表に出ない人がたくさんいることをご存知と思います。

「自分は、これほどの能力をもっているにもかかわらず、なかなか見出してくれない。上には人を見る目のある奴がいない」

世には、そんな不平不満が蔓延しています。

三国志の英雄、諸葛孔明は、劉備から三度請われ、蜀で働くことになりました。それこそ20代の若者に、国の王が自ら三度訪問したことを「三顧の礼」として、今でも語り継がれる史実です。
 しかしこの諸葛孔明は、ある方の紹介が有ったればこそ、劉備が軍師への招聘を決断します。誰が紹介するかにも要因があります。ですから自分がどれほどのものかを、信用を持つ人々へ能力を伝える努力が必要と思います。そしてその広報の手法は、あつかましい宣伝ではなく、少しづつ信頼を得るような交流が大事なように思います。

 宮本武蔵は、晩年に肥後の細川家に仕えますが、その時には自分の実績をまとめた「身上書」を提出し、自分をアピールしています。日本人は、PRが下手と言われますが、ここと言うときは、自分の能力を知らせる努力が必要と先人も語っています。

 「五輪の書」の中に、「我が一流において太刀に奥口なし。構へに極まりなし」とあります。本来の意味は、本人から聞けないので定かではありませんが、要は、

「野の遺賢が、自己PRをしないのは、怠慢であり、それによって見出されないからといって、他を恨むのは間違っている」

と言う意味(思い)かもしれません。実際晩年になって細川家に志願した宮本武蔵は、本もっと早く自己PRをして大藩に出し仕えることを、考えたのではないかと思います。そして世に名を成す人は、後継者を育てることも責務ではないかと思います。

 話しが横にそれますが、幕末の肥後藩は、宮本武蔵の理念が受け継がれ、考え方が面々と連なっていたと地元紙で歴史に詳しい方から教えてもらいました。例えば、辛亥革命をリードした孫文を支えた、熊本の宮崎兄弟は、元々肥後藩の剣士の家系にあり、二点一流の流れにあると語られていました。

 日本社会では、自分のことをあまり宣伝をすると、他人の顰蹙(ひんしゅく)を買い、かえって裏目にでることが多い。自己宣伝は、ほどほどにした方がいいと言われるし、またいっそしない方がいいとも言われる。
 作家の童門冬ニ氏の著書「宮本武蔵の人生訓」の一節に、次ぎの言葉があった。

「自己PRは、現在、決して罪悪ではない。逆に過度の謙遜こそ、他に対してウソをついていることになる。自分の本当の姿を隠すからだ」

 自己PRは、なかなかむずかしいものです。信用は、他人が作ってくれるもの、自分に与えられたことを着実に成し、少しづつ積み上げることが大事と教示されました。
 色々な場面に遭遇し、先輩方の行動を検証しながら、どんな言動が適切か勉強していくことが大事と思います。

 努力もなく棚からぼた餅を期待するかぎり、本当の評価は、得れないと思います。自分の目指すことを成してこそ、語る(PRする)ことができると思います。

 宮本武蔵の教示は、とても深いものがあると思います。

*参考資料:童門冬二著「宮本武蔵の人生訓」


<以前の日記>
道理は一歩も譲るな(菜根譚)

(現代語訳)
 労せずして欲望がかなえられるからといって、うっかり手を出してはならない。いちど手を出せば、どんどん深みにはまりこむ。
 道理が貫けないからといって、少しでも後ろに退いてはならない。いちど退けば、どこまでも後退を余儀なくされる。


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Posted by ノグチ(noguchi) at 00:37│Comments(0)偉人
 
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