「原子力の平和利用が人間の全ての目標設定と使命を規定するようになると、人間は自らの本質を失わねばならぬ」(ハイデッカー)

2021年04月17日

「原子力の平和利用が人間の全ての目標設定と使命を規定するようになると、人間は自らの本質を失わねばならぬ」〜エッセイ『ハーベルーー家の友』(マルティン・ハイデッカー著、1960年)〜

この言葉は、2007年に出版された『世界の名言100選 ソクラテスからビル・ゲイツまで』(金森誠也監修)の一文にある原子力の悪しき影響力の問題を突いていました。ハイデッカーの文章は1960年の作品で、60年以上前のことでした。

現在、ドイツは原子力発電をゼロへ向けて、いち早く進んでいますが、後発の日本、原爆を受けた日本が、逆に福島第一原発事故まで、世界一原発を推進し、輸出製造もしてきました。

そんな中に東日本大震災が発生しました。

科学者たちが、1000年に一度の大津波発生の可能性を東電に提言を出していたのですが、それをまともに受け入れず、福島第一原発事故を招いたのです。

なぜ、この事故は起こったか?

この文章の末尾に以下の言葉がありました。

(以下、転載)

 彼(ハイデッカー)によれば、人が不安と恐れの中で生きているのは何よりも死にかかわる存在だからである。「人はいつか必ず死ぬ」と語る時でも、その人は「さしあたって自分はまだ死なない」と思っているようだ。こうして人は死ぬことを覆い隠し、不安から逃げようとする。(中略)
(以上、本より)

>さしあたって自分はまだ死なない

を読み替えると、「原子力発電所は、最新技術を持つ日本では事故は起こらない」の過信があった。

最近の自然災害は、想定をはるかに超える被害を出し続けていた時期に東日本大震災が発生した。

科学者が予見したのに、"さしあたってそんな津波は来ない"と、被災することを覆い隠す気持ちになっていたのだろう、と想像します。

>人間は自らの本質を失わねばならぬ

さらなる自然災害から事故が発生する前に、地下資源(石炭・石油・ウラン等)に頼らない再生可能エネルギーにどう移していくか、世界の政治の課題になっています。


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