<福島第一原発爆発と住民>住民の望みは「1ミリシーベルト」に戻すことだと思った。〜安東量子著『海を撃つ』より〜

2021年03月20日

<福島第一原発爆発と住民>住民の望みは「1ミリシーベルト」に戻すことだと思った。〜安東量子著『海を撃つ』より〜

(長文です。時間ある時にお読みください。)

昨日、届いた福島県いわき市在住の作家・安東量子さんの著書『海を撃つ』を1/3ほど読んだ。 

津波発生後の福島第一原発事故による放射能汚染。福島県民に対する蔑視と態度、その中で放射線に対する科学者たちの説明は、専門用語が並び取り付きにくいほど、ややこしく解説し、住民を納得させようとする態度。

筆者は、福島第一原発爆発後の3月15日に危険を感じ、一旦は水戸の親戚宅に避難した。しかし、3月21日にいわき市の自宅に戻り生活し始めた。以来、地域住民の変化や不安、不満、やりきれない気持ちを感じ、"何かできないか"と情報を集め、学び、2011年9月に専門家を招き講演会を開く、その時に聞いた専門家の説明には、住民は理解はするが、納得していない。

そんな時に、国際放射線防護委員会の「勧告」の存在を知り読むことになったという。安東量子著『海を撃つ』にある以下の説明から、住民の望みは何か、自ら気づいたことを紹介しています。

(以下、『海を撃つ』より)

 彼女の不安は、「汚染」された不安であり、汚染の中で子育てをしなくてはならなくなった不安であり、さらにその奥底には、元の環境を返して欲しいという、誰しも持っている叶わぬ願いがあるのでないかと思います。これも当然、科学的知識うんぬんの問題ではありません。
(以上、本より転載)

を講演会を主催した感想文をまとめる中で気づき、国際放射線防護委員会の「勧告」をネットで見つけ、解釈文から導き出したヒントは、

(国際放射線防護委員会の「勧告」より)

 人びとの望みを知り、当局と専門家は放射線量の低下を目指しながら、それを支える手段を共に、考え実施せよ。
(以上、安東量子さんの「勧告」の解釈より)

要は、被災地の住民の寄り添い、すぐに減衰しない放射線が、自然界に存在する「1ミリシーベルト」に下がるように、政府と専門家は努力すること、それと住民の不安と望み、

>ただ暮らしたいから、あるいはこれまで暮らしてきたからここで暮らしているだけ。この場所に暮らすことに特別な理由の意味も決断も必要ない生活。(中略)

要は、早く放射線量を日常の自然界に存在する「1ミリシーベルト」になることを望んでいる。当たり前のことを忘れて、20ミリシーベルトまでは大丈夫とか、100ミリシーベルトまで浴びて大丈夫だとかの話ではなく、早く昔の生活に戻して欲しい、ということなのだと分かった、と安東量子さんの本にあった。

特別な決断をせず、普通に生活できる環境を整えるまで、政府と東電は努力し、国民も被災者の苦労に思いを馳せることが大事と、安東量子さんが語っているようにと思いました。

数日前に紹介した、テレビ番組「福島を語る言葉を探して」で語った老婦人の言葉から、"自ら納得して、この地域で生きるしかない"の映像でした。

本読みながら、被災者の思いは、『海を撃つ』の題だが、原発に対する怒りであり、住民の心を忘れる対応への憤り、その前に、安東量子さん自身が、「福島第一原発事故が起こるまで、そんな危険なことを想像して生活していなかったことに対する怒りでもある」と語っています。

脱酸素社会と原発削減の日本とドイツの違いが、はっきりするのは、そう遠くないと思います。日本政府の脱酸素社会実現2050は、何を世界へアピールするのか、福島の被災者の動きとともに関心を持っていきたいと思います。

<福島第一原発爆発と住民>住民の望みは「1ミリシーベルト」に戻すことだと思った。〜安東量子著『海を撃つ』より〜
<福島第一原発爆発と住民>住民の望みは「1ミリシーベルト」に戻すことだと思った。〜安東量子著『海を撃つ』より〜


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Posted by ノグチ(noguchi) at 11:18│Comments(0)未来社会東日本大震災
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