<原発事故を学ぶ>「ほら見て、兄さんだよ。英雄なんだ!」。母さんは泣き出したよ。〜『チェルノブイリの祈り』より〜

ノグチ(noguchi)

2021年03月30日 07:24

<原発事故を学ぶ>ベント(排気)、ペレット(ウランを固めた塊)、マイクロシーベルト、ミリシーベルト、シーベルト、専門用語に悩まされた。〜爆発直後の記者のメモから〜

「ほら見て、兄さんだよ。英雄なんだ!」。母さんは泣き出したよ。〜『チェルノブイリの祈り』より〜

(長文です。お時間ある時にお読みください。)

今朝は、『ふくしま原発作業員日誌』の冒頭に書かれている、福島第一原発事故直後から取材した記者の日記をまとめた序章から

(以下、本より)

 この間私は、東電や保安院の会見で次々出てくる専門用語や原発の構造の複雑さに悩まされた。格納容器の圧力を下げる「ベント(排気)」は「弁当?」とノートに記し、核燃料の主成分二酸化ウランを固めた塊「ペレット」は「フェレット」と大まじめに書いた。専門用語の音を聞き取るのが精いっぱいだった。「ペットじゃねぇよ」と上司に笑われながら、原発の構造と刻々と変わる状況からを理解するのに日々必死だった。そして、会見出て説明される現場や周辺の放射線量の単位は、μSv(マイクロシーベルト)から、mSv(ミリシーベルト)、あっという間にSv(シーベルト)また上がっていった。

 3月11日午後2時46分に起こった地震直後から、福島第一では一刻を争う緊迫の事態が続いた。・・・
(以上、『ふくしま原発作業員日誌』より)

10年前の今ごろは、私は東日本大震災の被災地支援活動の真っ最中でした。福島第一原発事故についてはニュースでは見ていたものの実態はよく解らないままでした。安東量子著『海を撃つ』を読み、これは知ることが必要と思い、色々本を調べる中、今読んでいる『チェルノブイリの祈り』と『ふくしま原発作業員日誌』をまず読もうと思い購入しました。

チェルノブイリ原発事故後に警備に当たった兵士の日記が、『チェルノブイリの祈り』にありました。

(以下、本より)

 あそこ(チェルノブイリ)を発つ前には恐ろしいと思ったよ、ほんの一時。ところが、あそこでは恐怖が消えていくんだ。恐怖が目に見えないんだから。
 ひとりの学者がいう。「私は、きみらのヘリコプターを舌でなめてきれいにしたっていい。それで、わたしになにか起こることはないよ」。べつの学者がいう。「おい、きみたち、なんで防護用具をつけないで飛ぶんだ。命をちぢめる気かい?鉛でおおって接合したまえ」。朝から夜まで飛んだ。作業、重労働。夜は、テレビの前にすわった。ちょうどサッカーのワールドカップをやってたんです。もちろん、話題はサッカーのことだよ。
 ぼくらは考え込むようになった。たしか、3年が過ぎたころだよ。ひとり、ふたりと発病した時です。だれかが死に、気がふれた。自殺者もでた。それで、考え込むようになったんだ。ぼくはアフガンに2年いたし、チェルノブイリに3ヶ月いた。人生でもっとも輝いていた時間なんだ。
 チェルノブイリに送られたことは両親には伏せたいた。弟が、偶然『イズベスチヤ』(新聞)を買い、ぼくの写真を見つけて母に見せた。「ほら見て、兄さんだよ。英雄なんだ!」。母さんは泣き出したよ。(中略)
(以上、『チェルノブイリの祈り』より)

安東量子著『海を撃つ』は、福島の原発事故で発生した放射能漏れによる汚染を取り上げた、被災者からの視点から原発事故を学ぶ機会になりました。住民の心の変化について、関心を持ちました。

その後に購入した『チェルノブイリの祈り』と『ふくしま原発作業員日誌』なのですが、私たちは、原発について何も知らない、知らされていないことをあらためて気づき、そして原発で発電している電気の恩恵を受けている自分たちがいる。

地球温暖化対策と再生可能エネルギー普及、それと今在る原子力発電所の存在意義、便利で快適な生活を求める人間社会、ほんと何を未来に求めるのか、考えながら二冊の本を読んでいます。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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